燗酒はタイ料理と合わせても本領を発揮する
最初はおっかなびっくり手をのばした。タイ料理に合わせるのだという。燗酒は、どんな料理でも受け止めてくれる万能な酒だということは知っていたが、タイ料理との相性は想像がつかない。だから、おっかなびっくりだったわけだが、合わせてみて、躊躇した自分にちょっとショックを受けた。
なんとなくあう、のではなく、パーツとパーツがカチッとハマったようなピッタリの相性だったのだ。たとえば、魚介と春雨のヤムウンセンやパパイヤを使ったソムタムなどの料理に、あたためた純米のにごり酒を合わせると、米の甘みが酸っぱ辛さを和らげてスッと味わいをひとつにまとめてくれる。自家製たれに漬け込んだ鶏の炭火焼きのガイヤーンや、タイのハーブつくねなどの肉料理と燗酒は、肉の脂と米の旨味がガップリ組み合う相性。
タイ料理と日本酒は斬新な組み合わせなのに、旧知の仲のように手をつないでいるのが不思議だった。
「タイ料理はナンプラーや小海老を塩漬けしたカピなど、発酵食品をよく使うので、同じ発酵仲間の日本酒に合うのではないでしょうか。特に、漬物や珍味、醤油や味噌を使った肴など、日本の発酵料理に合う純米の燗酒をおすすめしています」(店長の三浦剛さん)
燗酒はやっぱり懐が深かった。その深さは、タイ料理と合わせることによって、さらに深化していくのではないだろうか。
呑めるタイ料理屋ラコタ
添加物を使わず、調味料から手作りで厳選の国産野菜をふんだんに使ったタイ料理が味わえる。店名の通り、お酒が進むメニューが豊富で、2011年から提供しはじめた冷酒や燗酒でおいしい日本酒の他にも、ビールや焼酎、カクテルなど様々なお酒も楽しめる。
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-22-10寿々木ビル1F 0422-27-5527
17時半〜24時(23時LO)、水木金土〜翌3時(翌2時LO)不定休

写真 村田 圭
http://keimurata.format.com
取材・文/山内聖子 呑みますライター・SSI認定唎き酒師
〝夜ごはんは米の酒〟が
『蔵を継ぐ』(双葉社)
筆者と同世代の造り手5人の酒蔵を継ぐまでの軌跡を記したノンフィクション。親の大きな負の遺産を抱えながら奮闘し、今日の日本酒人気を生み出した、知られざる彼らの熱き想いと素顔に迫る。
掲載蔵元:冩樂、廣戸川、白隠正宗、十六代九郎右衛門、仙禽
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