さりげなくおいしい熱燗を飲める店
夏に飲む熱燗は、私にとって汁物みたいな存在だと思った。
暑い日はどうしたって冷たいものが欲しくなるし、しっかり汗をかいた後に口にするビールにレモンサワー、きりりと冷えた日本酒なんてのも最高で「和食 日なた」の店主の大関さんがつくる、桃のサラダや実山椒の辛みが効いた浸し枝豆などをつまみに飲んでいると、体がよみがえってウキウキしてくる。
でも、しばらくすると、なんとなく胃腸がひんやりしてきて、冷たいものに手がのびなくなる。そんなときに飲む、じわじわと体にしみわたる熱燗のたまらないおいしさよ。大関さんがつけてくれた、あつあつの辨天娘をすすって思わず、お腹の底から深いため息がでる。
「僕にとって燗酒がお酒の真ん中なんです。いろいろ飲むなかの動線上にあってくれたらいいなと思っています」
熱燗は、汁物を飲みこんだときみたいな、ホッと安心する脱力感があった。ついさっきまで飲んでいた、冷たいお酒たちがずいぶん遠くに感じられ、気がつけば熱燗の世界にどっぷりと浸っていた。
和食 日なた
清潔感のある暖簾が目印で、線路沿いにポツンと佇む店。平成25年にオープンして以来、地元の人たちのみならず、遠方からもお客がやってくる日本酒の名店だ。旬の食材を使ってつくる店主の料理は、技とアイディアをピリリと効かせた酒が進むつまみばかりで、アラカルトもあるが、コースをぜひおすすめしたい。食べるのが楽しくなるおいしさがある。お酒は熱燗でうまい銘柄だけではなく、冷酒タイプも豊富なので料理によって色々とお試しいただきたい。東京都武蔵野市中町1-25-10-1F 0422-52-6733
17時半〜24時(最終入店23時半)水休

写真 村田 圭
http://keimurata.format.com
取材・文/山内聖子 呑みますライター・SSI認定唎き酒師
〝夜ごはんは米の酒〟が
『蔵を継ぐ』(双葉社)
筆者と同世代の造り手5人の酒蔵を継ぐまでの軌跡を記したノンフィクション。親の大きな負の遺産を抱えながら奮闘し、今日の日本酒人気を生み出した、知られざる彼らの熱き想いと素顔に迫る。
掲載蔵元:冩樂、廣戸川、白隠正宗、十六代九郎右衛門、仙禽
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